もう一週間も前になります。ご紹介が遅れましたが、1月30日の日本経済新聞の第一面のコラム「春秋」にドナルド・キーンのことがありました。
引用は、父の著書『生きている日本』(足立康訳)で、1973年に朝日出版社から出ています。しかしこの本の元は、ニューヨークの出版社から1959年に発行されたLiving Japanでした。両方とも絶版になっていますが、今一番手軽に読めるのは講談社学術文庫の『果てしなく美しい日本』の第一部に「生きている日本」という項目があり、そこで全文を読むことができます。『果てしなく美しい日本』は2002年に出版され、たぶん30刷くらまで版を重ねています。
今回の「春秋」を全文掲載することは、日本経済新聞に許諾を得る必要があるので、残念ですが一部だけを掲載させていただきました。親しい記者の方がおられる新聞社や雑誌社などの記事は、比較的簡単に掲載の許諾をいただけるのですが、日本経済新聞の場合は現在はそういう方がおられないものですから、申し訳がございません。
筆者は、『生きている日本』(足立康訳)から、「日本人は彼らを美化したり軽蔑したりする傾向があるが、それはふつう相手の国籍次第である」という一文を引用し、日本において繰り返される外国人労働者の虐待について論評しています。そして「くり返されるトラブルを、どうしたらなくせるのか。キーン氏の嘆きが聞こえてきそうだ」と締めくくりました。
63年も前に、父が指摘していたことが今も続いていることは、日本人として大いに恥じるべきことでしょう。それにしても父の慧眼には恐れ入ります。